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研究情報

研究情報

脳腫瘍分野

脳は手足を動かす、話す、考えるといった人間らしさをつかさどっているところから、生命維持をつかさどっているところなど、非常に大事な機能をつかさどっている臓器です。その脳にできた脳腫瘍は、周りの大事な正常な脳に拡がっていくことが多く手術にみですべてを摘出することは難しいともいえます。そこで、脳腫瘍の研究では脳腫瘍の遺伝子を解析し、その遺伝子背景に応じた新たな治療法を目指すことが大切となります。

脳腫瘍幹細胞をターゲットとした治療法の開発

腫瘍細胞のなかでも、高い増殖能をもつ腫瘍幹細胞が、腫瘍の再発・増大や転移に関与してきていることがわかっています。私たちは手術中に採取した腫瘍組織から脳腫瘍幹細胞を単離・培養しています。また、培養した脳腫瘍幹細胞をマウスの脳に移植すると、患者さんと同じような腫瘍ができます。脳腫瘍幹細胞やマウスの脳腫瘍モデルを用い、腫瘍ができるメカニズムを解析し、治療効果の期待できる薬剤(抗がん剤、分子標的薬、抗体薬など)について検討を行っています。

遺伝子解析に基づいた治療法の選択

悪性神経膠腫に対しては、代表的な遺伝子異常に関し、シークエンス法などを用いた解析を行い、患者さんの治療方針を決定する際の参考にしています。
また、一般的に標準治療(最良の治療)として、手術後にテモゾロミド(テモダール)という抗がん剤を併用した放射線治療を行いますが、この抗悪性腫瘍剤であるテモゾロミド(テモダール)が、効きやすい腫瘍であるか、効きにくい腫瘍であるかを調べています。具体的にはMGMTという遺伝子の状態を検査します。この検査結果を参考にすることによって、患者さんにとってよりよい治療法を選択することが可能となります。

脳血管障害

内頚動脈狭窄症の病態解明と新規治療法の開発に関する研究

高齢化やライフスタイルの変化に伴い頸動脈狭窄症患者は増加しています。特に出血を伴うプラークの不安定性は高いことが知られており、このような例では脳梗塞の発症が多く、ステントを留置する際の合併症も多いといえます。この問題を解決するために、プラーク内出血の病態の解明と新規治療法の開発をテーマに研究を行っています。
これまで頸動脈内膜剥離術で摘出したプラークを免疫組織化学的に検討したところ、術前MRIプラークイメージにおける出血とプラーク内低酸素に関連があること、プラーク内新生血管ペリサイトの減少がプラーク内出血に関与する可能性を見出しました。今後、頸動脈狭窄病変におけるペリサイトの機能解明やプラークの不安定化に関わる因子の解明をすすめ新らたな治療法を目指したいと考えています。

脳梗塞の病態解明と新規治療法の開発に関する研究

脳梗塞の超急性期治療は血栓溶解療法・機械的血栓回収療法の登場によって大きく進歩しています。
また、臨床試験の段階ですが、創製された幹細胞の投与により炎症や免疫反応を抑え治療する細胞治療法も開発されております。しかし、こうした治療には時間的制約があり、治療の恩恵を受けられる患者さんはごく一部です。また、現在の治療では改善が得られない場合があり、脳梗塞の増悪の機序については、まだ多くが解明されておりません。我々の教室では、新規治療法の開発を目標に、脳梗塞モデルマウスを用いて、脳梗塞における炎症性サイトカインによる神経細胞の損傷のメカニズムの解明に取り組み、新規治療の開発につなげたいと考えています。

脳動脈瘤の成因ならびに治療に関する研究

脳動脈瘤の形成過程において血行力学的負荷と炎症が重要な役割を果たしていることが知られています。抗炎症作用を有する薬剤が脳動脈瘤の増大・破裂の抑制に効果があると考えられており、これまでに様々な研究が行われていますが、現在のところ臨床応用されていません。脳動脈瘤の増大・破裂や塞栓術後の再発に関わる因子を解明し新規治療の開発を目指しています。

もやもや病の病態解明に向けた研究

もやもや病は、両側内頚動脈終末部が進行性に狭窄する疾患です。代償性に発達した穿通枝はもやもや血管と呼ばれ、日本人が初めて報告しました。発症の原因は不明ですが、近年17 番染色体にあるRNF213遺伝子が、もやもや病の感受性遺伝子であることが発見されました。そこで我々も九州地区の患者さんでRNF213遺伝子多型について調査し、報告してきました。しかし、RNF213 遺伝子変異のみではもやもや病を発症しないことから他に要因があることが想定されており、もやもや病の病態解明を目指した基礎研究をおこなっています。

小児脳神経外科

二分脊椎の歩行時足底圧についての検討

二分脊椎は、膀胱直腸障がいや下肢運動麻痺や知覚鈍麻などの症状があります。とくに足 底皮膚については角質肥厚や胼胝、皮膚潰瘍がしばしば経験され、皮膚トラブルが胼胝から 潰瘍にまで進展すると難治化して長期間の治療を必要とし、同じ部位に潰瘍を繰り返し形成することもあります 。足底皮膚潰瘍は二分脊椎患者の生活の質を悪化させる重要な要因になっています。 我々は、足底皮膚トラブルの難治化するメカニズムは、下肢運動麻痺がある二分脊椎患者は成長とともに足部が変形する。変形した足は歩行時に荷重圧のバランスが乱れるために足底皮膚にトラブルを形成する。加えて下肢知覚鈍麻があると痛覚による防御機構が働かないため、潰瘍があっても活動量を制御することなく歩行するためではないかと考えています。 そこで、歩行時足圧分布足底システム(F-scanⅡ)を用いて、足底潰瘍の予備軍を検出する新規検査方法を開発しています。

再生医療

神経障害に対する再生治療

再生医療とは、機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器に対して、細胞を積極的に利用して、その機能の再生をはかる治療です。これまで長い間、中枢神経は一度損傷すれば、二度と再生させることはできないということが、常識として受け入れられてきました。しかし、近年幹細胞というどんな組織の細胞にも分化することができる細胞が発見され、これを神経再生に利用しようという試みが始まっています。我々は、脳卒中などで生じた神経障害に対する再生医療の可能性について検討を行っています。
このような再生医療の臨床は、治験の段階で、まだまだ一般的ではありませんが、将来の治療として大いに期待されています。